※週末政治
面と向かって“好き”とは言えない。だけど、気になる存在です――。学生時代の甘酸っぱい青春の一ページではないが、“恋”の行く末には安倍総理も目を離せないという。野党が密かにラブコールを送るのは、臨時国会の裏の主役を張るカレ、れいわ新選組を率いる山本太郎代表(44)だ。
居並ぶ国会議員の前で安倍総理が、参院選で当選したばかりのれいわの議員に対してエールを送ったことが一つのサプライズだった。
今月4日の所信表明演説でこう語ったのだ。
〈舩後靖彦さんの当選を友人として心よりお祝い申し上げます。(中略)国政の場で、共に力を合わせていきたいと考えております〉
政治部デスクが解説する。
「総理は3日に行われたマスコミ各社との懇談で、“女性や障害のある方の社会進出など、多様性ある社会の実現が進んだという意味で触れる”と話していました。総理と舩後さんは参院選前からのメル友でもあります。れいわに言及することで、障害者への理解をアピールする狙いがあったようです」
安倍一強を謳歌する総理にとっても、無視できない存在のようだ。
もっとも、山本氏を注視しているのは、“多弱”と揶揄される野党幹部たちの思惑も絡むからである。かねてから山本氏は「次の衆院選で政権を取りにいく」と公言。100人の候補者を擁立すると表明し、野党共闘を呼び掛けている。だが、その条件は消費税5%への減税で一致すること。先のデスクが続ける。
「参院選では、消費税廃止を訴えていましたが、それでは野党結集には程遠い。そこで5%への減税まで譲歩したのです。ところが、立憲民主党の枝野さん(幸男・代表)は“一度上げたものを下げたら混乱する”と慎重姿勢を崩していません」
その枝野氏は山本氏のことをかつてこう評していた。
「枝野さんは欅坂46の『黒い羊』という曲が好きでカラオケでよく歌います。それになぞらえ、“我々は黒い羊だが彼はピンクの羊だ”と語っていました。野党の数合わせには与しない立憲と、目立ちたい山本さんとは違うのだと言いたかったようです。しかし、いまの状況でそんなことは言ってられません」(立憲関係者)
先の参院選で、立憲は比例票を前回衆院選より300万票以上減らし、国民民主党も惨敗。その危機感から、この臨時国会を前に立憲と国民を含めた野党が統一会派を組むことになった。
“民主党同窓会”
野党担当記者が呆れて、「国民の玉木(雄一郎)代表は会派を組む前に奥さんに相談したところ、“民主党同窓会じゃん! やめたら?”と言われてしまったそうです」
現状では総理の言う“悪夢”だった民主党政権を想起させるだけ。必要な旗頭が山本太郎、というわけだ。
「玉木さんはオフレコで“次の次ではなく次の選挙で政権を取る”と強気に言うのですが、山本さんと主張が一緒だ、と記者から失笑を買っています。枝野さんも同様で“ピンクの羊でも彼を評価している”と秋波を送っているのです」(同)
滲み出る山本氏への恋慕。先の参院選では寄付金だけで4億円を集め、次期衆院選ではさらなる上積みも期待できる。その人気ゆえ、「枝野さんはれいわを巻き込んだ野党共闘の腹をすでに固めています」
と指摘するのは政治ジャーナリストの鈴木哲夫氏。
「山本さんを馬鹿にしたようなことを言いながらも、現実主義者として、れいわは共闘から外せないと思っています。山本さんも野党をひとつにしたいという思いから、消費税廃止を5%への減税にまでハードルを下げた。今後、5%をさらに共闘しやすい数字に引き上げることも考えています」
山本氏は最近のインタビューで、かつての後見役である小沢一郎衆院議員へ賛辞を惜しまない。選挙の“知恵袋”も控える中、総理は警戒の度を強めているが……。
政治アナリストの伊藤惇夫氏は、「山本さんは社会的弱者にスポットを当て、他の野党が出来なかったことをやったとは言えますが、主張があまりに左がかっている。新党にも“旬”がありますし、一定の支持を得てもそれ以上は難しいのでは」
かつての「メロリンQ」が、今や総理も気を揉む永田町の台風の目。他に役者はいないのか。
週刊新潮 2019年10月17日号掲載
https://www.dailyshincho.jp/article/2019/10200801/?all=1&page=1
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